地方議員の政務活動費の不適切な使用が相次いで明らかになっていますが、複数の地方議会で政務活動費が議員どうしでつくる議員連盟の会費に充てられ、使い切れなかった分が事実上プールされていることがわかりました。中には、料亭での飲食費の一部に使っていた議員連盟もあり、専門家は「使いみちがブラックボックスになる」として返還すべきだと指摘しています。
政務活動費は、地方議会の議員の調査活動費用として報酬とは別に支給されており、年度で使い切れずに余った場合は自治体に返還するよう条例で定められています。
ところがNHKが情報公開請求などによって各地の議会を調べたところ、政務活動費が議員どうしで作る議員連盟の会費として支払われ、使い切れなかった分が翌年度に繰り越されているケースがあることがわかりました。
岩手県議会では、平成27年度に22の議員連盟の会費が政務活動費から支払われ、合わせて382万円が翌年度に繰り越されて事実上、プールされていました。
会費の使いみちを見ると、「文化芸術振興議員連盟」では「お座敷文化の鑑賞と体験」という目的で料亭で唄や踊りを鑑賞しながら酒を伴う食事の費用の一部に充てられていました。
この議員連盟の会長を務める工藤勝博県議会議員は取材に対し、「議連の事務局の県職員が事務的に会計処理したのだと思う」としたうえで、返還については「これから検討しなければならない」と話しています。また、大阪府議会でも7つの議員連盟でほとんどの議員が政務活動費から会費を支払って翌年度に繰り越されていたほか、北海道議会でも少なくとも3つの議員連盟で、政務活動費から支払われた会費が翌年度に繰り越されていました。
このうち、167万円余りを繰り越していた北海道議会の議員連盟は「今年度は会費の徴収をせず、今後、会費の在り方を検討する」と話しています。
日本大学法学部の岩渕美克教授は「形を変えてプールするとどのように使われるのか不明確になり、『ブラックボックス』ではないかという批判が出てくる。わかりやすく、見えやすくするのが第一だ」として使わなかった分は返還すべきだと指摘しています。
全国で相次ぐ不正
政務活動費をめぐっては、全国の地方議会で、不適切な支出が相次いで明らかになっています。
富山市議会では去年、印刷費の架空請求や、飲食代の水増しなど、4000万円を超える政務活動費の不正や不適切な使用が明らかになり、38人の議員のうち14人が辞職する事態となりました。
宮城県議会でも去年、当時の議長が、運転代行の代金として白紙の領収書に実際より多い金額を記入して政務活動費を受け取っていたことがわかり、議長を辞任しています。
また最近では、神戸市議会議員が印刷業者に架空の発注をして720万円余りの政務活動費を不正に受け取った疑いが報じられ議員辞職しました。
こうした中、政務活動費の支出の透明性を確保しようという動きも広がっています。
全国市民オンブズマン連絡会議によりますと、ことし6月1日現在で全国の主要な地方議会で議員が提出した領収書をインターネットで公開しているのは、30の議会で前の年の3倍以上に増えました。
ただその公開は、全体の4分の1にとどまっていて依然として多くの議会で政務活動費をめぐる情報の公開が課題となっています。
北海道議会でも繰り返し
一方、北海道議会でも政務活動費から会費が支出され使い切れなかった分が翌年度に繰り越されている「議員連盟」があることがNHKの取材でわかりました。
北海道議会には、国際交流や地域振興などを目的に少なくとも16の「議員連盟」があります。
NHKが入手した内部資料によるとロシア・サハリン州との交流を目的に結成され、道議会議員の8割以上が加盟する「北海道・サハリン交流促進北海道議員連盟」は、年間で1万2000円の会費を徴収しており、ほとんどの会員の議員が政務活動費から会費を出していました。
しかしこの議員連盟では、徴収した会費を使い切れずに、平成27年度は118万円、昨年度は167万円余りを翌年度に繰り越していたことがわかりました。
道議会事務局によりますと、政務活動費を「議員連盟」の会費に充てることは問題ないものの、政務活動費は、年度ごとの使用に限られており、使い切れなかった場合は、道に返納することが条例で定められています。
これについて北海道・サハリン州交流促進北海道議会議員連盟の事務局長を務める梶谷大志道議は「繰越金が出たため今年度は会費を徴収していないが、年間いくらの活動資金が必要なのか、また、繰越金が発生するものに政務活動費を充当するのがいいのかどうか、所属議員で検討したい」と話しています。
また、ベトナムとの友好を目的に結成された「日越友好北海道議会議員連盟」でも加盟する議員の9割を超える88人が政務活動費から年会費6000円を出していますが、平成27年度には86万円余り、平成28年度には85万円余りが翌年度に繰り越されていました。
日越友好議員連盟の事務局長を務める笠井龍司道議は「年度ごとの使用に限られる政務活動費の性格を考えると、繰り越しはよくなかった。今後は、会費の額などについて見直すことも検討する必要がある」と話しています。
岩手県議会 議連の会費 使いみちは
岩手県議会では、政務活動費でまかなわれている議員連盟の会費が議員と県職員が出席した会議の昼食代などにも使われ、1人当たり2000円のすしや弁当を注文していたケースもありました。
また、ある議員連盟では「お座敷文化の鑑賞と体験」という目的で料亭で唄や踊りを鑑賞しながら酒を伴う食事の費用の一部に充てられていました。
岩手県議会の場合、政務活動費の事務処理についてのマニュアルで「新年会や忘年会等明らかに飲食を目的とする会合への出席費用やバー、クラブなどで行われる懇親会の会費に政務活動費を充当するのは適当ではありません」としていますが、「会議や研修会等に連続した懇親会経費は、政務活動費を充当することが可能だと考えられます」としています。
この議員連盟の会長を務める工藤勝博県議会議員は、「事務局を務める県の職員が会計処理で事務的にしたことだと思う。返還についてもこれから、検討しなければならない」と話しています。
島根県議会 議連への支出 見直しの動きも
地方議会の中には、政務活動費を議員連盟の会費に充てることを見直す動きも出ています。
島根県議会の一部の会派の議員連盟では、これまで所属する議員20人余りから毎月5000円ずつ会費を徴収し、年間130万円余りを集めていました。
所属する議員はいずれも政務活動費から会費を支払い、集められた資金は議員連盟が主催する飲食を伴う会合の費用に充てられていました。
しかし、ことしに入って島根県議会で政務活動費をめぐる不適切な支出が相次いで発覚したことを受け、この会派では、議員の政務活動費から議員連盟の会費を徴収することをやめて、飲食を伴う会合については原則、自己負担とすることを決めました。
自民党島根県議会議員連盟の五百川純寿会長は、「当初は講師を呼んだり、県の執行部を呼んで、意見交換や調査もやるために食事をともにしていたが、だんだんとそういう側面が希薄になってきたので、飲食費が伴う会合については基本的に個人の負担にすることにした」と説明しています。
全国の議会では
議員連盟の会費を政務活動費で賄うかどうか、各地の議会で対応は分かれています。
大阪府議会では、国際交流などを目的にした議員連盟が7つあり、議員の多くが政務活動費で5000円から1万円程度の会費を支出しています。
このうち平成28年度はすべての議員連盟で使い切れなかった分を繰り越していて台湾との交流を目的にした「大阪府議会日華親善議員連盟」では最も多い76万円余りを繰り越していました。
府議会総務課は、「議員連盟では、予算がなるべく余らないように毎年の活動内容を考え、活動が少ない年は会費を徴収しないなどの工夫をしており、決算で繰り越された金額は常識の範囲を超えていないと考えている」としています。
一方、福岡県議会では12の議員連盟で議員が政務活動費などから支払っている会費のほかに県から補助金を受けて活動を行っていますが使い切れなかった分は年度末に県に返還しているということです。
また、政務活動費の不適切な使用で議長が辞任した宮城県議会では、議員連盟の会費は政務活動費ではなく議員報酬から支払われているということです。
(引用:NHKニュース(http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170929/k10011162201000.html))